授業記録:文学入門 ドン・キホーテ

騎士道に憧れたイタいオヤジ

先日は「文学入門 ドン・キホーテ」を開催しました。

某ディスカウントストアを思い浮かべた方も多いのではないでしょうか。
おそらくその名前もこのスペインが生んだ偉大な文学から名付けられたものです。

「ドン・キホーテ」とは、文学の名前であり、
そしてその文学の主人公の名前でもあります。

本名はアロンソ・キハーノ。
冴えない中年男で、彼は一つの趣味に没頭していました。
それは中世の騎士道物語を読みふけることでした。

ちなみに、この小説の舞台は近世ですから、
中世の騎士道物語に憧れるとは時代遅れなのです。

そして、その熱意は狂気へと姿を変えていき、
いつしか自分を騎士だと信じ込み、旅に出るのです。
彼はこうも信じていました。
不正が蔓延るこの世界で、自分は必要とされているのだと。

自分は必要とされていると思いこむ

この小説が出版されたのは1605年。
出版と同時にベストセラーになりました。
スペインを越えて、ヨーロッパ各国でも読まれます。

人々の心をつかんだのは、
この中年オヤジが自分を騎士だと思って、
助けを求めてもいない人々をあえて助けようとして
迷惑になっていく有様です。

サークルでそんな先輩っていましたよね(笑)
相談もしていないのにいちいち助けようとしてくる先輩です。
自分は正義の味方の気分だけど、実ははた迷惑なのです。

ドン・キホーテが風車に向って、猪突猛進するシーンは有名です。
彼には巨人に見えるので、成敗するために突進するのですが、
風車の羽根に馬ともども吹き飛ばされてしまいます。
こういったシーンの数々に当時の人々は抱腹絶倒でした。

喜劇だからこそ描ける「人間とは何か?」

しかし、こんな爆笑喜劇がなぜ文学として語り継がれるのでしょうか。
コメディというのは面白いけれど、底が浅いと思ってしまうものです。

だけど、忘れてはならないのは、笑いにこそ人の本質が隠されているということです。
著者セルバンテスも「ドン・キホーテ」が後世に文学として「崇め奉られる」とは思いもしなかったでしょう。
ある意味、無邪気に書いたからこそ、むしろそこに「人間とは何か」が描かれているのです。

私たちは、自分を騎士だと思いこみ、現実に適応できないドン・キホーテを馬鹿にします。
ですが、僕らはドン・キホーテと違って、現実を直視しているのでしょうか。
現代人の僕らでさえ、何かしらの価値観、それは騎士道ではないにしても、
その価値観を信じて生きているのではないでしょうか。

「お金がすべて」「学歴がすべて」「努力すれば報われる」「科学が真実を明らかにする」などなど。
実際、この世界は一つの価値観で捕らえられるほどシンプルなものではありません。
そして、人間は複雑なものを嫌います。
だから、単純な価値観を好むのです。

そう思えば、誰もドン・キホーテを馬鹿にはできない。
実は、「ドン・キホーテ」は喜劇ではないのです。悲劇なのです。

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