授業記録:文学入門 悪霊

霊の話ではない

本日は「文学入門 悪霊」を開催しました。

この作品は、ドストエフスキー四大長編の一つです。
その中に数えられる「罪と罰」「カラマーゾフの兄弟」と比べると
少しマイナーな印象はあるかもしれません。(もう一つは「白痴」)

特にタイトルを聞くと、ホラー系の作品だと思ってしまいます。
しかし、この物語は非科学的などころか、
人間の愛憎が招くドロドロの物語なのです。

悪霊とは、作中で引用される新約聖書の一節の言葉です。

悪霊どもが豚の中に入る許しを願うと、イエスはお許しになった。
悪霊どもはその人から出て、豚の中に入った。
すると、豚の群れは崖を下って湖になだれ込み、溺れ死んだ。
―「ルカによる福音書」第8章32~36節

ロシアを襲う社会主義思想の猛威

悪霊とは、思想を指しています。
それは、当時、流行しはじめた社会主義思想です。

当時のロシアはまさに混迷した時代でした。
ヨーロッパと比べて後進性が明らかになったため、
ロシアは国を挙げてヨーロッパの真似事をしはじめたのです。

まず、資本主義を真似します。
しかし、資本主義の到来によって、ロシアには貧富の格差が拡大。
むしろ社会と人々の精神はすさんでいきました。

そして、もう一つヨーロッパから思想が流入しました。
それは一足早く資本主義の矛盾に気づいた者たちが、
人々を管理し、平等を約束する社会主義を提唱したのです。

こうして、当時のロシアは、資本主義が蔓延し、
それに反対する社会主義者の活動が過激になる騒がしい時代だったのです。

そして、予言は現実になった。

しかし、著者のドストエフスキーは、資本主義には反対だったものの、
人々を人工的に管理し、貧富の差をなくす社会主義にも疑問を感じました。
人間を管理などできるのだろうか?

そんな社会になれば、資本主義よりも恐ろしい社会が生まれるのではないか。
こうした動機で彼は社会主義という悪霊にとりつかれた者の末路をこの作品で描いたのです。

皮肉にもドストエフスキーの推測は当たりました。
なぜなら、約50年後にロシアは斃れ、ソビエト連邦が誕生。
社会主義国家です。
そして、正義の名のもとに多くの人間が殺戮されたのでした。

社会主義に興味がないなら、この作品は楽しくない、なんてことはありません。
この作品は、むしろ思想に溺れやすい人間の性(さが)を描き切っています。
このブログではあらすじに全く触れることはできませんでしたが、
ドストエフスキーの作品の中でももっとも多くの登場人物が死ぬという
サスペンス的要素が多い、手に汗握る作品です。

小難しいことを考えずに是非読んでみてください。

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