授業記録:宗教入門 ギリシャ神話 オイディプス王

2400年前に誕生した悲劇の傑作

先日は「宗教入門 ギリシャ神話 オイディプス王」を開催しました。

「オイディプス王」とは、紀元前4世紀のギリシャで作られた演劇です。
当時の観客は誰もが知っていたギリシャ神話を元にしています。

ギリシャ神話とひとくくりに言っても無数のエピソードが存在します。
その中の一つのエピソードを、
悲劇作家のソポクレスが脚色したのが「オイディプス王」なのです。
あの哲学者アリストテレスを「悲劇の傑作」と言わしめたほど物語の完成度が高いです。

ちなみに、ギリシャ神話の特徴は、神々の世界のいざこざに人間が振り回される点です。
「オイディプス王」ではゼウスやポセイドンなどの神は登場しませんが、
神からの予言である「神託」に振り回される人間たちが描かれます。

無意識に父を殺し、母を娶った男

オイディプスは、父親を殺し、母親を娶った男です。
そう聞くと、オイディプスはタブーを犯した極悪人に思えます。
しかし、面白いのは本人にはまったく自覚がないのです。

彼は捨て子で、別の国の王に拾われ、王子として育ったのでした。
オイディプスはその王と妃を実の親だと考えています。

そして、彼は故郷を旅立った道すがら、
ある老人と揉め事を起こし、しまいには殺害してしまいました。
その後、テバイという国に到着し、王に即位したのです。
その国にはなぜか王はおらず、未亡人になった妃がいたのです。
オイディプスは年上の彼女を娶ります。

もう勘の良い方ならお分かりですね。
道すがら殺したろう老人がテバイの国王であり、実の父なのです。
つまり、オイディプスは母と結婚し、子供まで生んだことになりました。

「知らぬが仏」とは言うけれど…

この物語が私たちに問いかけるのは、「真実を知るべきか、否か」です。
「オイディプス王」が上演された当時のギリシャでは、
哲学が発達し、あらゆる事象を解明しようとするムードがありました。
ソクラテスやプラトンもこの時代の人間です。
何でも知ってしまおうという風潮があったのです。

オイディプスは、物語が進むとともに、
自分が父親を殺し、母親を娶っているタブーを犯した人間であるという事実に
徐々に気づいていきます。

妻である母親は先にその事実に気づき、「もう真実を知るのはやめなさい」と彼を止めます。
しかし、知ることを正義だと考えるオイディプスを止めることができません。
そして、自分という存在自体が罪であることに気づいたオイディプスは自ら眼を抉るのでした。

技術の発達によってどんなことでも解明できると過信しているのは現代人も同じです。
「知らぬが仏」という諺がいまこそ力を持っているのではないでしょうか?

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