授業記録:哲学入門 ニーチェ

アリとキリギリス、なぜキリギリスは悪者なの?

本日は「哲学入門 ニーチェ」を開催しました。

ところで、皆さんは童話「アリとキリギリス」をご存知でしょうか?
働き者のアリと、毎日ヴァイオリンを弾いて働かないキリギリス。
冬が来て、アリはせっせと働いたおかげで食料に困らず住みました。
しかし、準備をしていなかったキリギリスは凍死してしまうのです。

きっと子どものときに読んでもらったことがあるはずです。
そのとき、あなたはどんな教訓を得たでしょうか?
「せっせと働いて、将来の準備をしないといけない」
そう感じた人は多いと思います。

ニーチェはここに疑問を持ったのです?
なぜ、キリギリスが悪者にされるのか?

どちらが生きていることを楽しんでいるのか?

それでは、こんな質問をしてみましょう。
アリとキリギリス、どちらが人生を楽しんでいるでしょうか。

毎日せっせと苦しい思いをして冬の食糧を貯めこむアリ。
毎日明日のことを考えず、好きなように演奏を楽しむキリギリス。

キリギリスの生き様はストリートミュージシャンのそれです。
貧しいけれど自分の生きざまを楽しんでいるようです。
ところが、アリの生き様は居酒屋で愚痴を言い続けているサラリーマンのそれです。

ここでニーチェは気づいたのです。
僕らは無意識にアリの生き方が良い生き方だと刷り込まれているということを。

善いが悪い、悪いが善い、すべてが逆転

ニーチェは、アリの心理をこう想像したのです。
「キリギリスがうらやましい!
だけど、自分は将来のことをなげうってまで楽しむ勇気がない」

だったら、キリギリスを悪者にしてしまおう。
つまり、「今を楽しむこと」を悪としてしまおう。
すると、「今を楽しまず、将来を考えている」自分こそが善になります。
こうして、アリは自分を慰めたのだとニーチェは言います。

人間本来の道徳、つまりキリギリスの道徳を「貴族道徳」、
キリギリスのように人生を謳歌する人間を嫉妬する人間たちがつくりあげた道徳を「奴隷道徳」と、
ニーチェは名付けました。

奴隷道徳は世界にはびこっているのです。
「アリとキリギリス」を通して、私たちがアリの生き方を推奨されていることがそれを証明しています。
誰もが当然と思っていて、気づかなかったことに気が付いたのがニーチェでした。
そして、ニーチェは私たちの「本来の生き方」を促すのです。

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