授業記録:セネカ

多忙すぎる公務員が残した人生充実の秘訣

本日は「哲学入門 セネカ」を開催しました。

セネカとはローマ時代の哲学者であり、
あのイエス・キリストと同時代を生きました。

ところで、皆さんはこんなことを思ったことはありませんか?
哲学者って良いこと言うけれど、
山や書斎に籠っている人に言われても説得力がないな~と。
所詮、机上の空論だって感じてしまう。

しかし、セネカ自身も本業は哲学者ではなく、
元老院議員や裁判所の仕事を務めたほどの公務員でした。
むしろ、有能過ぎて、政治の争いごとに巻きこまれてしまうのです。

そんなしがらみの中でセネカが残した言葉であれば、
しがらみの中で生きる現代人にも強い説得力を持つではありませんか。

「ストイック」の語源は、ちょっと違う

セネカの哲学はストア派という思想に位置づけられます。
ストア派の哲学者を表す「ストイック」は現代でもよく使われますね。

今「ストイック」とは「禁欲的、厳格」を意味しますが、
本来の意味は少し違うのです。

ストア派が何よりも大事にしたのは「自然に従う」ことです。
うーん、わかりやすいようで、わかりづらい。
自然とはいろいろな意味がありますからね。

ストア派にとって、自然とは理性と同義です。
なぜなら、自然が人間にのみ与えた能力こそが理性だからです。

よって、「理性に従う」ことがストア派の目指すところです。

たとえば、現代のストイックは禁欲を意味するので、
お金や名誉を欲してしまうこともタブーです。

しかし、本来のストア派はお金や名誉を求めることを非難しません。
むしろ、それらを理性によってどう正しく使うかが重要なのです。

暇をつくれ、そして過去の偉人と対話せよ

この授業ではセネカの哲学をわかりやすく、
三つの切り口で紹介しました。
①徳、②権内の権外、そして③閑暇です。

③閑暇とは、暇を持つこと。
その点におけるセネカの代表作は「人生の短さについて」です。

セネカは、仕事に忙殺されて、暇を持つことを忘れるなと忠告します。
私たちも多忙な日々を過ごしていますが、
暇が全くない人もいないでしょう。
であれば、セネカは褒めてくれるのでしょうか?

いえ、セネカは暇をどう使うべきなのか、このように言っています。

すべての人間の中で、閑暇な人といえるのは、英知を手にするために時間を使う人だけだ。
そのような人だけが、生きているといえる。

そう、時間を使って、学問を究める人間のみが閑暇な人間と言えるのだとセネカは説きます。
私たちは暇な時間ができても、
つい享楽に走ってしまったり、
「リア充」になるべく形だけは充実したイベント(友達とBBQみたいな)で予定を埋めます。

しかし、それは暇の無駄遣い。
セネカは英知を手に入れる人間のことをこう表現します。

というのも、そのような人は自分の人生を上手に管理できるだけでなく、
自分の時代に、すべての時代を付け加えることができるからだ。

もちろん、暇があったら勉強というのもなかなか息苦しいですが、
そうでなくても、人はそもそも怠けたり、享楽的なものに走りがちなものです。
セネカの言葉を心の片隅でもいいので飾っておきたいものです。

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