教養を高めてくれるドラマ❷

古典教養大学学長の宮下です。

前回に引き続き、教養を高めるお薦めドラマ。

 

今回紹介するのは、「ウェストワールド」

 

これも神ドラマです。

これを見たら、

「人間って何なんだ!人間をもっと知りたい!」

という感情に揺さぶられるはずです。

 

私自身、人生で初めて全話を一日で見てしまいました。

10話×60分。

 

 

第1話を見た瞬間、

このドラマで問いかけているものは僕が知りたいことだと思いました。

 

設定が魅力的なんですよ。

 

ウエストワールドは、未来のテーマパークなんです。

名前の通り、西部時代が再現されていて、

建物や街はもちろんのこと、人間まで再現されているのです。

 

え、人間?

もちろん、アルバイトではありませんよ。

人間そっくりにできたロボットなんです。

見た目にはまったくわかりません。

 

 

入場料は数百万円と高額ですが、

その分、このパークの中ではなにをやってもいいんです。

 

ロボットに対する強盗、殺人、凌辱、すべてが許される。

(ちなみにエグいシーンは描写されないのでご安心ください)

 

主人公は、この麗しいドロレス。

彼女は朝目覚めて、牧場の清々しい空気を吸いながら、

「この世界は美しい」とつぶやきます。

 

 

しかし、その美しさゆえにたいていゲストの慰み者になり、

最後は暴力で殺される、悲惨な人生なのです。

 

殺されるといっても、彼女が死亡すると、

パークの片づけ係がやってきて、修理に出されます。

もちろん、記憶もすべて消去。

 

そして、自宅のべッドの上に戻されて、スイッチオン。

すると、牧場の清々しい空気を吸いながら、

「この世界は美しい」とつぶやくのです。

 

そう、彼女は何度も何度も同じ目覚めを繰り返し、

最後はゲストの暴力によって殺される人生を

数万回も繰り返しているのでした。

 

 

ところが、あるとき何かの不具合で、

最後に殺されたときの記憶が残ってしまっていたのです。

 

ここから彼女はパークの運営者に予想できない動きをしていくことになります。

中盤では銃を隠し持ち、襲ってきた男を撃ち殺すまでに成長します。

 

ドロレスに恋する設定のガンマン、

毎日強盗をさせられている悪党、

売春宿を経営している女主人、

すべてのロボットが徐々に「自我」を持ち、

「ウェストワールド」が世界の全てではないことに勘づいていくのです。

 

 

そして、自分の自由意志でやっていると思っていた毎日が、

実はプログラムされていたことに気づき、

本当の「願望」を持っていきます。

 

これはまさにフランス革命、アメリカ独立革命、そして明治維新に至るまで、

抑圧された人々が「自由」の概念を知るまでの過程の追体験にほかなりません。

 

もう一つ、印象的だったのは、

「あの世を信じられる人間は強い」ということ。

 

ロボットたちは徐々にパークで死ぬことが、

本当に死ぬことではないことにも気づいてしまいます。

つまり、死んでも回収されて再度目覚めるだけなんですから。

 

 

すると、それを知った売春宿の女主人は、

パークの運営会社に乗り込むために、

あえて客を怒らせて、自分を刺殺させるなんて行動にも出てしまう。

回収されれば、運営会社のビルに運ばれることになるからです。

 

その際、シェイクスピアの「ジュリアス・シーザー」のセリフ、

「臆病者は何度も死ぬが、勇敢なものは一度しか死なない」と喋らせているところが、

制作チームのレベルの高さをうかがえます。

 

何はともあれ、来世を信じているからこそ、

危険を顧みないのは宗教的なテロリストたちと同じです。

 

 

あなたも見てみたら、

最初はロボットたちの酷い扱われ方、

プログラムされた台詞しか吐けない窮屈な人生に同情するでしょう。

 

しかし、気づくのです。

では、私たち人間が神の創造物だとしたら、

どれだけロボットたちと違いがあるのだろう?

 

現在、amazon プライムで無料で視聴できるのでおすすめです。

(ちなみにシーズン2,3はレベルが急に落ちるので、シーズン1だけで十分です)

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